日本農業遺産認定目指す 下津蔵出しみかん
和歌山県海南市下津町の地域農業ブランド「下津蔵出しみかん」の栽培システムを日本農業遺産に認定申請することを目指し、海南市や県、農業・商工関係者らは24日、推進協議会を立ち上げ、設立総会を海南市役所で開いた。農林水産省が次回の認定地域を決定する来年2月に向け、協議会は申請に必要な資料やプレゼンテーションなどの討議を重ねていく。
日本農業遺産は2016年に創設。2年に1度申請でき、初回は宮城県の水田農業システムや埼玉県の落ち葉堆肥農法など7県8地域が認定された。独自の農業システムを継承する地域での機運醸成や、特産品の販路拡大などへの効果が期待されている。
下津地域は急傾斜地で、稲作や畑作が困難な土壌。住民は土砂の崩壊を抑えながら傾斜と土壌条件を生かしたミカン栽培に約400年にわたって取り組み、暮らしを支えてきた。山頂や崩れやすい急傾斜地には雑木林を残し、その下に石垣の段々畑を築いてミカンを栽培。災害耐性にも配慮し、木造土壁の貯蔵庫でミカンを自然熟成させ、付加価値を高める技術も培ってきた。
推進協議会は、こうした「下津蔵出しみかん」の優れたシステムを内外にアピールするため、日本農業遺産への認定を目指す。設立総会では規約や2018年度事業計画、予算案などが承認された。
役員は、会長に神出政巳海南市長、副会長にながみね農業協同組合の次本圭吾組合長理事、監事に下津柑橘部会の岡畑浩二部会長、下津びわ部会の新谷武一部会長らが就任した。
岡畑監事(58)があいさつし「先人が知恵を積み上げてきた栽培法が農業遺産に認定されることにより、後継者不足の緩和や地域の活性化につながればうれしい」と話した。
総会に続いて研修会があり、和歌山大学システム工学部の養父志乃夫教授(61)が「下津蔵出しみかんシステム」の概要を解説した。
県内では、「みなべ・田辺の梅システム」が、日本農業遺産認定制度の創設前に世界農業遺産に認定されている。