震災1年 和歌山県の取り組み聞く
東海・東南海・南海地震の恐れがある県では、 東日本大震災の発生から1カ月もたたずに、 防災・減災対策を総点検するスケジュールを立てた。 避難所の見直しなどの 「緊急点検」、 来年度中を想定した 「中期対策」、 国が中央防災会議で出した被害想定に合わせた 「長期対策」 と3期に分けて設定。 この一年の県の取り組みと今後について、 県の髙瀬一郎総合防災課長に話を聞いた。
―まず取り組んだことは
東日本大震災では、 浸水予想地域ではないところで多くの死者が出た。 例えば岩手県山田町では、 「高さ3㍍の津波がくる」 という放送による情報が住民にとって逆に安心情報になり、 たくさんの人が命を落とした。 その中で教訓になったのは、 岩手県釜石市で小中学生のほとんどが逃げて助かったという釜石の奇跡。 ことしの県民の意識調査の結果でも、 今回の地震で避難したのは16・8%しかなかった。 みんな 「一番に逃げるのが恥ずかしい」 という気持ちがある。 とにかく県民に逃げる意識を持ってもらおうと。 地震発生から津波到来まで、 和歌山市は約1時間、 串本町は約6分と予想されており、 避難所を3つの安全レベルに分けて設定することにした。 釜石の奇跡でおなじみの群馬大学大学院の片田敏孝教授らを集めた専門家会議を設け、 アドバイスをもらった。 避難所の安全レベルを分けるのは全国で初めてのこと。 旧態依然ではなく、新しい取り組みをすることで、 県民が 「私らのところはどうなんだろう」 と意識改革するのが大切。
―避難先などを書き込む避難カードを作成したのは
レベル分けをしたのは、家族の構成によって逃げられる距離が違うだろうから、 選択肢を増やしたかったということもある。 家族で話し合って、 避難カードを書き込むことに意義がある。
―来年度の防災対策で特に力を入れていることは
私たちが岩手県に行って自衛隊の人から聞いたのは 「避難所にどれだけの人がいて、 何を必要としているのか、 被災者の情報がなかった」ということ。 せっかくの支援物資も、 必要な場所にいかなければ意味がない。 そこで県では、 災害情報収集分析システムを構築する。 例えば県の職員が避難所を巡回し、避難人数や必要物資などを聞き取ってタブレット端末に打ち込めば、 県庁の災害対策本部で把握できる。 できるだけ簡単なシステムにし、 県や振興局の職員が使えるよう、 研修もしていく。
―今後の課題は
知事が行政報告会で言い続けているが、 いまだに十分に避難所レベル分けの主旨が浸透していないところもある。 市町村には、 地区懇談会などを利用して、 どんどん県民に浸透させてほしい。